膝・股関節の専門外来

人が「歩く」動作を行うにあたって、足関節とともに非常に重要な器官なのが膝・股関節です。加齢に伴う変性疾患や、慢性的な痛みが続く疾患も多く、薬物療法とリハビリテーションを合わせることで効果が期待できます。エックス線検査では確認できない半月板や軟部組織などが関係していることもあるため、当院ではMRI検査など先進機器を駆使して診断・治療を進めていきます。膝・股関節の人工関節置換手術にも対応しています。

人工関節の手術
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人工関節の手術

膝関節

膝関節は、不安定で複雑な関節です。股関節のように周囲を骨が覆っているわけではなく、靱帯や筋肉、半月板などの軟部組織が支え合っているため、ケガや故障を起こしやすい部位だといえます。そのため、加齢に伴う疾患だけでなく、小児期からさまざまな疾患が発生します。特に若い世代はスポーツを原因とした疾患も多いのが特徴です。当院ではできるだけ手術をしない保存治療を第一に、患者様に合った治療の提案に努めています。

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こんな症状でお困りの方はご相談ください

  • 膝の痛み
  • 膝の腫れ、熱感がある
  • 階段の昇り降り、起き上がるときに痛い
  • 歩き始めが痛い
  • 長時間歩くと症状が出て歩けない
  • 転倒や打撲などのけが

股関節

股関節は、人体最大の荷重関節です。骨盤と下肢をつなぐ非常に重要な役割を担います。肥満や日本人女性に多い骨格の方は、股関節疾患になりやすいことがわかっています。股関節は歩行機能に直結するため、寝たきり防止のためにしっかり治療を行うことが重要です。当院では現存機能の中で最大限のパフォーマンスを引き出すためのリハビリテーションに力を入れています。「強い痛みで日常生活に支障を来す」ときには、手術が必要となる場合もあります。

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こんな症状でお困りの方はご相談ください

  • 股関節の痛み
  • 足の付け根の痛み
  • 足の長さが左右で違う
  • 歩く際に 股関節の動きが悪く、歩きづらい
  • 歩行時に足を引きずるようになった

主な疾患

変形性膝関節症

概要

変形性膝関節症は関節軟骨が擦り減ることにより、大腿骨と脛骨を結ぶ関節や膝蓋骨と大腿骨を結ぶ関節に変形が生じる疾患です。関節軟骨は年齢とともに弾力性を失い、使いすぎにより擦り減り変形していきます。また、骨折、靱帯や半月板損傷などの外傷、関節リウマチ、化膿性関節炎などの感染の後遺症として発症することもあります。男女比は 1:4で女性に多く見られ、高齢者になるほど罹患率は高くなります。
主な症状は、膝の痛みと水がたまることです。初期では立ち上がり、歩き始めなど動作開始時に痛み、休めば痛みは取れますが、進行するにつれて正座や階段昇降が困難となり、末期になると、安静時にも痛みが取れず、膝がぴんと伸びないほど変形が大きくなり、歩行が困難になります。
診断は触診による膝関節の隙間の圧痛有無の確認、関節の可動域の確認、必要に応じてMRI検査をします。

治療法

患者様の状態に合わせて、薬物、注射、装具、リハビリテーションなど総合的に駆使して行っていきます。 注射は軟骨を保護することで痛みを軽減するヒアルロン酸注射の他、炎症を抑えて痛みを軽減するステロイド注射を用いることもあります。その他、関節液がたまり関節の動きを悪くしている場合は、関節穿刺をして関節液を抜いたり、足底板やサポーターを使用し、O脚やX脚の変形による負担を減らしたりします。歩行指導やストレッチなどのリハビリテーションで、関節の動く範囲を広げたり、関節周囲の筋肉を鍛えたりするのも有用です。 それでも事態が改善せず、膝の痛みが強く生活に支障が出てしまう場合は手術を検討します。入院期間は2~3週間で、退院後もリハビリテーションは継続して行っていきます。

前十字靭帯損傷

概要

前十字靱帯(anterior cruciate ligament:以下 ACL)は、膝関節の中にある靱帯で、脛骨の脱臼や内旋、膝関節の過伸展や外反を防止しています。このACLがスポーツ中の接触やジャンプ、急激な減速、切り返し動作などで損傷することを前十字靱帯損傷といいます。
ACLが損傷すると「膝が腫れて、熱を持つ」「膝がぐらぐらする」「膝に力が入らない」などの症状が起こります。受傷直後は、膝の腫れや痛みにより歩行が困難ですが、しばらくすると日常生活は問題なく、運動もジョギング程度ならできるように回復します。しかし、スポーツ時には、膝崩れを起こすことが多くなり、スポーツ継続が困難となります。

治療法

積極的なスポーツ復帰を希望の場合は、自身の他の部位の腱(自家腱)を移植する手術療法となります。スポーツ復帰の希望がない場合や、手術をすると試合・大会などに間に合わない場合には保存療法となります。
手術を選ばれた場合、まずは術後の回復が良好に進むように術前リハビリテーションを行います。
その後、脛骨と大腿骨に穴を空け、自家腱を移植・再建します。
手術後は再建した靱帯と骨孔の固定性を高めるため、週に2〜3回通院してリハビリテーションを行います。担当の理学療法士と状態をチェックしながら徐々に活動量を上げていき、おおむね術後6カ月以降に筋力測定を行いつつスポーツ復帰していきます。術後8カ月以降で競技専門的動作を医師と動画チェックで確認し、選手個々の事情を考慮しながら徐々にもとのスポーツへ復帰します。

半月板損傷

概要

半月板とは、大腿骨と脛骨の間で関節の適合性を良くしたり、クッションのような働きをしたりしている軟骨のことです。スポーツ中の接触や荷重、また加齢により脆くなっていることが原因で損傷します。半月板を損傷すると、膝の曲げ伸ばしのときに痛みや引っ掛かりを感じる、階段の昇り降り時の痛み、膝にこりこりとした違和感、運動後に水がたまるなどの症状が出てきます。半月板損傷の疑いがある場合はMRI検査を行い、半月板だけの損傷か(他の軟骨は損傷していないか)前十字靱帯など他の靱帯損傷と合併していないかを精査しながら診断します。半月板が一度損傷すると、損傷部位によっては治りが悪く、後年になって膝関節機能障害を来すことが報告されています。よって、早期の適切な治療が重要となります。

治療法

半月板損傷はリハビリテーションや抗炎症薬の服用で改善する場合がありますが、改善が見られない場合、手術療法が適応となります。 半月板損傷の手術は、半月板切除術(損傷した部分を切り取る)と半月板縫合術(損傷した部位を縫い合わせる)があり、関節鏡を使って行います。手術は全身麻酔下で行い、手術時間30~60分、入院期間2泊3日になります。
術後のリハビリテーションは、行った術式によって異なり、切除術の場合は術後1.5カ月でのランニング開始、術後3カ月でのスポーツ復帰が目標となります。縫合術の場合は切除術より長くかかり、術後おおよそ4~5週で全体重をかけられ、術後3カ月でランニング開始、術後6カ月でのスポーツ復帰が目標になります。

変形性股関節症

概要

股関節の軟骨や骨が擦り減ることで、歩行障害が生じることを変形性股関節症といいます。 原因は加齢や肥満などとされていますが、生まれつきの股関節の発育不全(先天性股関節脱臼、臼蓋形成不全など。特に女性に多いとされる)から二次的に発症する場合が約80%といわれています。 症状は足の付け根やお尻、太ももの痛みです。初期には運動開始時や長く歩いた後のみですが、進行すると安静時にも痛みを感じたり、股関節の動きにくさを訴えたりします。股関節を深く曲げる足の爪切りや靴下の着脱などの動作に支障を来します。 診断は医師による触診、エックス線撮影、MRIやCTなどの画像検査などで総合的に判断します。腰椎椎間板ヘルニアなど腰椎の病気と症状が似ている場合もあるため、正しい鑑別が重要です。

治療法

初期には、薬物療法やリハビリテーション療法が選択されます。お薬によって、患部の炎症を抑え、痛みを軽減させます。リハビリテーションでは、運動療法による筋力強化やストレッチ指導などを行い、痛みの軽減や進行を遅らせます。
しかし、進行すると上記の方法では改善が乏しくなり、手術を選択することがあります。この場合、変形した股関節をそっくり人工の関節に置き換える手術(人工股関節置換術)が主となります。