肩・肘の専門外来

日常的な動作やスポーツで動かすことの多い肩や肘関節は、痛みを感じたことがある方も多いのではないでしょうか。年代によって、さまざまな疾患が隠れているケースもあります。 肩や肘の痛みは、患者様の日常生活動作を大きく制限する一因となるため、適切な治療やリハビリテーションの提供に努めています。また、肩と肘の症状は密接に関係することも多く、各専門の医師が連携して患者様の治療をサポートいたします。

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肩は体の中で最も可動性が大きい関節で、動きやすい反面、安定性に乏しいという特徴があります。若年の場合は野球や水泳などのスポーツによる障害や脱臼が発生することが多く、中高年になると四十肩や五十肩と呼ばれる肩関節周囲炎が起こりやすいです。高齢者の場合は、インナーマッスルの腱板が断裂してしまう腱板断裂や、肩関節の骨が変形する変形性肩関節症など、さまざまなケースが見られます。そんな肩の機能回復には、リハビリテーションが有用です。当院では、肩だけでなく全身を評価して治療やリハビリテーションを計画します。また、スポーツをされている患者様の場合は、試合の時期など、個々のご状況を考慮した治療を心がけています。

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こんな症状でお困りの方はご相談ください

  • 肩の痛みや重だるさが続く
  • 肩より上に手が上がらない
  • 高い所にある物に手が届かない
  • 物を持ち上げることが難しい
  • 背中まで手が回らない
  • 洗髪がしにくい
  • 服の着脱が難しい
  • 就寝中、肩の痛みで起きることがある
  • 安静にしていても肩に痛みがある
  • 運動している最中に肩周辺が痛む

肘は荷重関節ではないことから、加齢に伴う症状は起こりにくい一方、スポーツ障害がよく発生する部位です。肘の症状は原因が肩の場合もあるため、当院では肘と肩を専門とする各医師が連携して治療を進めていきます。また、慢性疾患である肘部管症候群は、薬指がしびれるなど肘から先に症状が出るのが特徴です。肘は前腕部のさまざまな動きに関与し、症状が出ると日常生活に支障を来す恐れがあるため、注意しなければいけません。

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こんな症状でお困りの方はご相談ください

  • 肘の痛み、腫れ
  • ものを持ち上げるなど、特定の動作の際に痛みが生じる
  • 小指や薬指をうまく動かせない

主な疾患

肩関節周囲炎

概要

肩関節周囲炎とは、肩関節の軟部組織(筋肉や腱、靭帯、滑液包、関節包)に炎症が起き、痛みや運動制限が起きることです。五十肩の呼び名でも知られ、中年期以降に好発します。放っておけば自然に治ると思われがちですが、実際には、痛みが引いた後も手を上げたり、背中に手を回す動きができないなど可動域制限が長引くことが多く、早期の診断・治療が必要となります。レントゲン撮影では異常が見られないのが特徴で、運動域を診たり、軟部組織の状態を精査するためにMRIを行う場合があります。

治療法

発症直後の炎症期は激しい痛みがあり可動域制限が強いため、飲み薬や注射、湿布などで痛みの緩和を図り、安静にします。続いて、関節が癒着しないよう、状態に合わせてスタッフの指導のもとでリハビリテーションを実施。その際、痛みの出にくいポジショニングをレクチャーします。少し痛みが和らいでくる拘縮期には、運動療法により関節の可動域を広げていきます。必要に応じて、患者様それぞれの仕事や取り組んでいるスポーツの特性を考慮した動作練習を開始。痛みを感じにくくなる解凍期には、肩周辺の筋力強化や肩甲骨を安定させるためのトレーニングを進め、関節の可動域の拡大をめざします。関節が癒着した場合には、手術をご提案することもあります。

腱板断裂

概要

肩の筋肉は2層構造となっており、肩関節の深部に付着している4つのインナーマッスルを総称して「腱板」と呼びます。その腱板が損傷・断裂した状態が腱板断裂です。腱板断裂の原因としては転倒や交通事故などによる外傷性の断裂と、加齢で40歳ごろから始まる変性による断裂の2つに分類されます。
腱板断裂はレントゲン検査では異常が診られないため、 診察とMRIなどの画像検査を総合して診断します。同じ肩の疾患である五十肩と比較して、比較的可動域が保たれている事が多いです。

治療法

腱板は血液供給が乏しく自然治癒しませんが、しっかり保存療法を行うと3~6ヶ月で約7割の人に症状改善が見られます。注射・内服による疼痛のコントロールと、理学療法による機能改善を主に行います。 保存療法で改善が見られない場合は手術を検討します。手術後は約3~4週間ほど装具で固定しつつ、肩関節が硬くなりすぎないように早期から痛まない範囲で可動域訓練を行います。他動運動(人に動かしてもらう)、自動介助運動(人や道具に補助してもらいながら自分でも少しずつ動かす)、自動運動(自分の力で動かす)を段階的に進めて、術後3か月で軽作業、6か月たつころには重量物の挙上やスポーツ復帰することを目標にリハビリします。

肩関節脱臼

概要

肩関節脱臼とは、上腕骨と肩甲骨からなる肩関節が、正常な位置からずれた(脱臼した)状態を指します。アメリカンフットボールやラグビー、柔道などのコンタクトスポーツや、交通事故、転倒などを理由に強い力がかかり、関節を守る靭帯が断裂すると発生します。強い痛みが安静時から生じ、肩の骨が出っ張ったり腫れたりします。いわゆる「肩が外れた」状態となり、上腕骨の骨折を伴うこともあります。一度脱臼すると関節のストッパー構造が壊れて、その後、より弱い外力で脱臼を起こしやすくなり、特に初めて脱臼した年齢が20歳以下の場合、8割の人はその後も脱臼を繰り返す「反復性肩関節脱臼」になります。

治療法

まずは手による整復術を行い、関節を適切な位置に戻します。その後、包帯や三角巾、肩専用の装具などで約4週間固定します。その後、元の肩の動きに向けてリハビリテーションを行っていくのが基本です。しかし、肩の働きを取り戻したとしても、その後も脱臼を繰り返す「反復性肩関節脱臼」になる確率は高く、アスリートが競技復帰をめざす場合などには手術も検討します。いずれも、関節の修復が十分でない時期に運動を始めると再発しやすいため、固定期間を守ることが大切です。当院では医師の指導のもと、理学療法士・トレーナーによる適切なリハビリで再発(反復化)の防止に努めています。

野球肘

概要

野球肘とは、野球を中心とした投球動作が原因で引き起こされる肘の痛みの総称のことをいいます。①肘の内側の痛み②肘の外側の痛み③肘の後方の痛み、の3つに大きく分類されます。腕の使いすぎや筋力・柔軟性の低下、投球フォームのバランスが悪いことが原因で、肘の内側には引っ張られる際のストレス、外側や後方には圧迫やこすれるようなストレスが積み重なり、痛みが生じます。
肘へのストレスが積み重なると、肘周辺の筋肉や靱帯が炎症を起こしたり、損傷を負ったり、神経への障害、軟骨損傷が起きます。中でも肘の外側に起こる疾患として気をつけなければいけないのが「離断性骨軟骨炎(OCD)」です。OCDは長期の投球禁止が必要になったり、肘の変形につながったりすることもあるため、痛みが出た場合は無理をせず病院を受診して早期の発見・治療が大切です。

治療法

野球肘の大半は、1~2カ月の期間投球を禁止し炎症を鎮めるなど保存療法にて改善が望めます。状態に応じてリハビリテーションを行い、日常動作や競技に復帰してもらいます。特にスポーツが原因で発症した場合は再発しないようにするためのケアの仕方やトレーニングの方法を指導し、ケガのない体作りを目指します。
軟骨や靱帯などの組織の損傷が激しく、保存療法で改善が見込めない場合、手術に至る場合もあります。